夢と浪漫あふれる、「日本郵船歴史博物館」

近代日本の船のあゆみ(画像クリックで拡大)

昨日、「日本郵船歴史博物館」に行ってきました。

「なんとなく船が好き(浪漫があるから)」と「なんとなく大正〜昭和初期くらいが好き(浪漫があるから)」というものすごいふわっとしたツボを押してくる展示でしたので、具体的な話はともかくとして、「なんとなく、すごく素敵だっ!」(なんとなさすぎて申し訳ない)

ざっくり言うと、かの有名映画『タイタニック』の世界なのです。第二次世界大戦前・20世紀初頭の文化やデザインってとっても素敵だと思っているのですが、そのアンティークな素敵さと船の持つ謎のカリスマ性が強力なタッグを!たまらない!

ディズニーシーの「アメリカンウォーターフロント」もこの辺りの世界観ですよね。なんちゃってタイタニックのS.S.コロンビアもあるし。このエリアすばらしく雰囲気があって、穴場の波止場みたいなのもあるので、そこで夕方くらいにビール飲みたい。気分はモダンガール。

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日本にも「タイタニック」が!

WSL(ホワイトスターライン社)三姉妹:オリンピック・タイタニック・ブリタニック
NYK(日本郵船会社)三姉妹:新田丸・八幡丸・春日丸

タイタニックは実は三姉妹だったのですが、日本にも美しい三姉妹がいたのですよ。豪華客船三姉妹。日本の船って「丸」がついてるから男性名っぽいけど、擬人化するとやっぱり女性になるんですね。

この絵じゃわからないと思いますが、本物のポスター(NYK三姉妹)はものすごく美麗なのでこちらのサイトさんでごらんください。画家の小磯良平氏が描かれたというこの絵、昭和モダンな着物の色合いが素敵すぎる!(それをイラストであまり表現できませんでした)

第一次世界大戦後から戦争が始まるまで(三姉妹ポスターは1940年のものだそうです)、こんな感じの日本の豪華客船が大海原をまたいで大活躍していました。きっと映画『タイタニック』のローズのようなセレブリティたちが世界一周する勢いで船旅をしていたのでしょう。

オリエンタルな国・ジパングを感じさせる和洋折衷の内装(和室もありました)に、食事のメニューや船内案内図などの印刷物。これがまた、素敵なんです!

(左)竹久夢二デザイン(右)なにか雅やかな女性と桜
色が綺麗!グラデーションが綺麗!

浮世絵っぽくありながら、どこかに西洋のエッセンスも入っている。大胆でシンプルな構図やグラデーションの美しさは浮世絵ゆずりだけど、そこに西洋の繊細な描写も加わって、「みんなの夢の国・ジャポン」って感じ(なぜフランス語)。春の霞のようなグラーデションを多用しまくっており、この陶酔感も伴う美しさが新古今和歌集の歌に似合いそうなので、いつかコラボしてほしいなと思う(切実に)。

なんだか、和洋折衷のさじ加減がほどよい、ちょうどよい、品が良い。私は明治〜昭和初期の日本の洋風建築も大好きなのですが、近代の人たちの和洋折衷のやり方にはいつも惚れ惚れします!なんで異質の文化を、あんなに自然な形で、素敵に混ぜられるのでしょう……。

本当に夢のような、美しく華やかな時代があったんだなと感じました。もちろん、このような美の恩恵にあずかれたのは、富裕層だけかもしれませんが……。

長い人類の進化の歴史の果て、ようやく大海原を自由に行き来できるだけの技術を得て、人々が世界中を行き交い、お互いの文化を吸収し合う。日本が培ってきた文化、西洋が培ってきた文化、それから世界中の文化が良い感じに混ざり合って明るく花開いていた時代なんじゃないかなぁと思います。

といっても、現代のようにインスタントに外国の情報が伝わるのとは違って、船の速度で伝わるわけなので、辿り着く頃にはちょっと文化の形が変わっている。西洋の思う東洋と本当の東洋は違っているし、その逆もまた然り。でも、それこそが一番の味わいどころ……むしろ現代はちょっとダイレクトすぎない?と思います。インターネットの速度が船くらいになれば良いのかなぁ(それは辛いなぁ)

それでも訪れる、戦争の足音

こんな華やかさのあとだから、余計に重苦しく感じられます。第二次世界大戦のために夢のような豪華客船は次々と軍事用に改造され、沈み、日本郵船の多くの社員さんも命を落とされたそうです。

あの美しい三姉妹も戦時下のポスターではこんなことに。
しっとり物憂げな表情から原色スマイルへ。かなしい。

戦争の話は辛いものですが、こうやって船体や印刷物のデザインを辿ってみて、戦争によって失われたもの(たくさんの命はもちろんのこと、美しい文化なども)をあらためて生々しく感じました。

うろ覚えではありますが、展示で見た写真では、輝くような白い船体が、グレーがかったカラーで一色に塗りつぶされ、あの豪華客船の象徴のようなかっこいい煙突も取り払われていたように思います。

宮崎駿監督の映画『風立ちぬ』で、軍事用の飛行機をつくっていたカプローニ(cv野村萬斎)が、「あれはほとんど戻ってこない。戦争が終わったら客を乗せる美しい飛行機をつくるのが夢」というようなことを言っていたな……もしかしたら船をつくっていた人も、そう思っていたかもしれません(そんなことを言える空気ではなかったと思いますが)。

ちょっと暗くなってしまいましたが……

「日本郵船博物館」、海図レターセットとか豪華客船時代の世界旅行パンフレットのポストカードとか、グッズも素敵ですよ。本当におすすめなので、横浜にお立ち寄りの際は、ぜひ!

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