梅の花、風に匂ふといふことを、人々によませ侍りしついでに
梅が香を 夢の枕に さそひきて さむる待ちける 春の山風
源実朝『金槐和歌集』
家臣を招いて行った歌会での作品のようです。
突然ですが、『「古今和歌集」の想像力』(鈴木宏子/著)という本に、「夢で逢えたら」という曲は古今和歌集的な感性だ……とあります。
薄紫色した 深い眠りにおち込み 私はかけ出して あなたを探してる
春風 そよそよ 右のほほをなで あなたは 私のもとへ かけてくる
なんだか、私はいつもこの曲を聞くと、実朝公のこの歌を思い出してしまうのです。
古今和歌集の感性は、もう少し後の時代に編纂される新古今和歌集にも受け継がれているし、実朝公はそのどちらもをよく勉強していたので、きっと同じ感性を持っていたのでしょう。
春は眠くなるもので、春の夜の夢というのは、なんだか薄紫色でふんわりしている……(きっと梅の香りのイメージなんじゃないかな、と勝手に思っています)。
梅の香りってふんわり淡い香りだから、現代の家の中では「薄紫色の夢」は無理そうですが……実朝公の時代なら、屋敷の中庭に梅の木でもあれば、夢見心地のところに風がふわーっと梅の香りを運んでくることもあるのかもしれません。
想像するだけでうっとりするような、とても良い心地の歌です。(実朝公の人生は苦労が多いから、夢の中くらい心地良くあってほしいですよね…!)
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