天の川 水泡(みなわ)さかまき ゆく水の はやくも秋の 立ちにけるかな
源実朝
天の川といえば大河の印象(だって彦星と織姫が渡れないくらいですし…)ですが、水の泡が渦巻いているとは、激しい印象の天の川です。
『宇宙吟遊 光とことば 星めぐり歳時記』(海部宣男/著)によると、もともと天の川のイメージは、古代からエジプトでもインドでも中国でも、とうとうたる大河のイメージだったそうです。
ところが万葉の時代に日本に伝わると、日本の風土に合わせて清流になったのだとか。
現代の我々はすっかり大陸視点に戻って、天の川というと悠々と流れている大きな川を想像しますが、昔の歌人たちはそこに日本の山々の間を流れていくような素早い清流を見ていたのですね。
この歌は七夕の物語や万葉以来読み古された型をはるか後ろに置き去って、逆巻き流れる天の川と、流れの速さとともに秋へと移りゆく季節とを、眼前の景としてあざやかに描き出す。
海部宣男『宇宙吟遊 光とことば 星めぐり歳時記』
実朝公の歌の天の川は、まさしく目の前に渦巻き激しく流れる清流があるかのよう。
ひょっとするとそれは、日本らしく山がちな鎌倉を流れる清流のイメージだったのかもしれません。
ちなみに現代人としてはちょっと意外なんですが、「七夕」って和歌の世界だと秋の風物詩なのですね。
「秋」が来るとしみじみするのは今も同じですが、その風物詩が急流のような天の川だったとすると、実朝公のように時の流れの早さを重ねてしまうのもうなずけますね。
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こちらは一変して、冬の凍った天の川の歌です。
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