
大切な人たちの思い出と一緒に……
※ちょっと熱が入りすぎました。この記事。








大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が始まり、
こんな実朝公の桜の和歌でお祝いした一年後の桜の季節……
大好きだった大河ドラマが終わってしまい、実朝公とその周りの優しい人たち(怖い人たちはさておき)の物語が終わってしまい……絶賛「鎌倉殿ロス」だった私は、今度は実朝公の大切な思い出と桜の和歌を結んだ作品を作り、はなむけとしたいと思いました(何の…?)。
屏風の中の桜の歌(和田殿)
屏風の絵に
山風の 桜吹きまく 音すなり 吉野の滝の 岩もとどろに
源実朝『金槐和歌集』春
『コレクション日本歌人選 源実朝』(三木麻子/著)によると、古来屏風を見て歌を詠む時に、屏風の中の世界に分け入って、またその音を想像して詠む……というのはよくあることだったんだそう。
でも、この歌のように吹き荒れる春の風の轟音を聴く……というのは実朝公のオリジナルかもしれないそうです。
「大海の磯もとどろに寄する波われてくだけてさけてちるかも」の歌や、こちらの激しい天の川の歌↓


のように、実朝公は時折とても激しいROCK!な歌をお詠みになりますね。
「ウリン!」と実朝公を呼ぶ声が温かかったお茶目な和田殿。義理人情に厚く、時代が変わっていく中で、戦を何度も戦い抜いてきた「古の武士」らしさを捨てずに、ある意味不器用に、まっすぐ生きた人。
実朝公は文系で武道は苦手の真逆タイプですが、不思議と馬が合う和田殿と一緒にいるのは、とても心休まるひとときでしたよね。(ROCK!なところが響き合ったのかも…!?)
もののふの 矢並つくろふ 籠手の上に 霰たばしる 那須の篠原
源実朝
こちらは那須野の巻狩での武士たちの様子を詠んだ勇壮な歌。
実朝公は武家の棟梁としての意識を感じるこうした歌も残していますが、きっと心の中の鎌倉武士の鑑は……父頼朝公以上に、長い間忠臣として実朝公のそばにいてくれた歴戦のつわもの・和田殿であったに違いありません。


春霞の中の桜の歌(太郎)
初恋の心をよめる
春霞 たつたの山の さくら花 おぼつかなきを 知る人のなさ
源実朝『金槐和歌集』恋
これは、ドラマの中でも使われていたあの歌ですね。


いつも近くで支えてくれる家臣の太郎(北条泰時)に想いを寄せていた実朝公は、この歌を太郎に渡すのでした。
この一見すると春霞と桜を詠んだようにしか見えない歌をもらって太郎くんは困惑するのですが、ドラマの中では源仲章殿が空気読まずに「それって恋の歌だよねーっ!」と言ってしまったのでもっと困惑。
結局その歌を実朝公にわざわざ返却しに行き、玉砕した実朝公が「われてくだけてさけてちるかも」の歌を詠む……という、和歌が折々で彩りを添えてくれる素敵な回でした(実朝公はかわいそうでしたが…)。
ちなみに金槐和歌集では隠すこともなくガッツリと「恋」の部の最初に入っていますし、「初恋の心をよめる」という詞書まで添えてあります。
ドラマではいつも太郎は実朝公の味方でいてくれて、最後実朝公が退場してしまってからも、太郎が実朝公の意志を受け継いで幕府を良くしていく……という展開がとても胸熱でした。
桜が散っちゃったので怒っちゃう歌(千世様)
三月の末つ方、勝長寿院に詣でたりしに、ある僧、山かげに隠れをるを見て、花はと問ひしかば、散りぬとなむ答へ侍りしを聞きて詠める。
行きて見むと 思ひしほどに 散りにけり あやなの花や 風立たぬまに
源実朝『金槐和歌集』春
この歌、詞書がすごく長くて、実朝公の日記を読んでいるみたいでほっこりします。
早く見に行こうと思っていたのに、行かないうちに桜の花が散ってしまっていた。
桜の花を散らす風を恨む歌は多いけれど、風も吹かずに散ってしまったものだから、怒りのやり場がなくて花を責めてます。
わかる。桜とか萩とか、シーズンが短い花ってよくそういうことあるよね……!
『コレクション日本歌人選 源実朝』(三木麻子/著)によると、実朝公はこの「思ひしほどに」という言い回しが好きだったみたいです。思ってるうちにやらないで終わっちゃった…ってすごく人間味があって、なんだか親近感が湧きますね。


ドラマでは実朝公は家臣の太郎が好き、という設定ですが、それを受け入れて寄り添ってくれる奥様・千世様との関係もとても素敵でした。
史実でも、実朝公と奥方様は仲睦まじく、よくお寺に花を見に行ったりしていたそうです。
先述の太郎くんに失恋させられてしまう回は、うまく打ち解けられていなかった千世様に秘密を打ち明け、二人の絆が生まれる回でもあります。
本当に、切なくて、でもやさしく温かくて、涙なしには見れない大好きな回です(というか実朝公が出る回は大体そうです…!)。
この作品を作っていたころの話
歴史上人物の実朝公はもちろんずーっと好きですが、大河ドラマの登場人物にこんなにハマったのは初めてでした。
歴史上人物(それもマイナーな鎌倉時代)ともなると、もはや流行り廃りを超えたところにある存在なので、祭りのような盛り上がりはなくとも、ひっそりと「好き」を落ち着いて楽しんでいました。
ひとたびこのような祭りになると……盛り上がりがすごかった分、それが終わってしまった後の「ロス」がすごくて、驚きました。
大河ドラマの実朝公という登場人物は、九月ごろに出てきて、十一月には退場してしまって……本当に短い人生(?)でした。やがてその数週間後に、実朝公が生きていた物語の世界そのものも終わってしまいます。
祭りの間、実朝公に命が吹き込まれたような気がしていたから……ドラマが終わってしまったら、その存在がぽっかり消えてしまったようで。
2023年の二月から四月ごろは、そういうぽっかりとした寂しさを抱えつつ、実朝公の歌を絵にしていました。




このあたりがその時期の作品。なんだか寂しい感じがするかも……?
そして、個人的な話になりますが、実はそのあと、しばらく体調を崩してしまい……色々あって、現在(2024年11月)やっと復帰してきたという感じです。(今は元気です…!)
なので、心がぽっかりとしたまま、和歌の作品も、実朝公の作品も、ここで長らく止まっていたんです。
ブランクが空いて、その間にいろんなことがあったり、時の流れもあって、さすがに「鎌倉殿ロス」はほとんど(!)治っています。
どこか新しい気持ちで、とりあえず、バタバタした鎌倉殿の一年くらいから溜まっていた作品をホームページにアップして、心もホームページも絵も気持ちを新たに、再スタートという感じです。
こうして、あの頃の作品を眺めていると、楽しかったなぁって懐かしい気持ちになりますし、やっぱり鎌倉殿好きだなぁって思います。
ドラマの実朝公はもう終わってしまったんですが、私はこれからもずっと実朝公の歌を絵にしていきたいと思っています。
自分の思う実朝公の姿ではありますが、大河ドラマの実朝公のスピリットは間違いなく注がれた、パワーアップした実朝公でお送りしたいと思います!(大げさ…!?)



最後に……やさしい三善殿も、実朝公の大事な仲間でした。漫画にできなくてすみません…!


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