だいぶ間が空いてしまいました……
↓前回までの鎌倉萩ツアーはこちら!
海蔵寺でピンクの萩を堪能し、道中おもしろ植物を楽しみながら、ついに宝戒寺までやってきました!
と、その前に……【②道草編】で通りすがった「大佛茶廊」さんのちかくには、こんな石碑が。
え……しらない……(将軍なのに)
よしときどの……
なぜここに!?
そう、宝戒寺はもともと、将軍を支えるふりをしながらいつのまにか幕府のトップに君臨していた北条氏のお屋敷があった場所。
そしてその目と鼻の先(それどころじゃなく邸宅の一部という説も)に、「若宮大路幕府」はありました。
じつは鎌倉幕府ってずっと一つの場所にあったわけではなく、1333年に鎌倉幕府が終わるまで二回のお引越しをしています。
- さねともくんが将軍やってた頃は下図①大倉幕府
- さねともくん銀杏の木のそばで暗殺されて源氏とだえる
- 北条さん(よしときさんの息子さん)によって②宇都宮辻子幕府→③若宮大路幕府というふうにお引越し
幕府は北条さんのものと言わんばかりの位置ですね(チクリ)
幕府まで徒歩0分!通勤、めっちゃ楽。
やり手で鉄仮面の北条さんだけは敵にまわしたくないものだと思いつつ、いよいよ宝戒寺の境内へと入っていきます(やっと!)
凛とした白い萩の宝戒寺は、武士の都の風情!
↓北条さんちの家紋がスゴイって話はこちら
白い萩って、なんかいつも「鳩」に見えてきちゃうんだよねぇ……
海蔵寺の鮮やかなピンクの萩とはまた違ったおもむきの、宝戒寺の萩。
ぱきっと白一色!というのが潔くて、なんだか武士っぽい。
さらには、この場所に住んだ最初の北条さんである、よしときさんの生き様を思わせます。
名だたるどんな歴戦の強者よりもクールに時勢を見据え、幕府がつづいていくために邪魔なものは(肉親でさえ)排除する!
そしていつしか幕府を牛耳ってしまったあの人。ときに冷たさすら感じさせる、あの人……
どんな場所にも、だれかが生きていた記憶があります。
そこで生きた人の思いや人柄を知ると、その地に咲いた花やたまたま吹いた風なんかが妙にリンクしているように感じられる……ということがあります。
そんなとき、自然を通じて、その人に出会えたような気がする。
たった一瞬のできごとなので、誰かと共有するわけでもなく、自分の心の中でひっそり味わうのですが……
こういうひそやかな楽しみも旅の醍醐味のひとつ♪
見逃さないでね!本堂横の隠れ癒しスポット
こちらの宝戒寺、みどころずらりなんですが、個人的にお気に入りなスポットが本堂脇に……。
なんでしょうね、これ?
手を洗うところ!?
水琴窟(すいきんくつ)……しずくが落ちる音が共鳴して琴の音ように聞こえるという、みやび極まりないお庭のアイテム!
というわけで今回それも撮ってきたんですが……すいません、音がとれてませんでした(というか動画も微妙……!?)
雰囲気となんとなくの使い方を感じていただき、ぜひ宝戒寺で体験してみてくださいね!
すずやかな良い音です〜(耳をすますと本当にかすかに聞こえるかも)
「最後から四番目の執権」たかときさんも出揃ったところで、本堂へお参りです。
ご本尊は、心を穏やかにしてくれるお地蔵様
宝戒寺の本堂って、本当に気持ちよくて落ち着くんですよね。
畳貼りで、広くて、堂内は風が通り抜け、庭の緑もよく見える。なんだかそこに住んでいたかのように、ついつい長居しちゃいます。
時間帯によってはお客さんが誰もいない時もあるので(お寺が閉まる30分前の15時半とか)、静かな空間でゆっくり心を整えることができます。
そしてここのご本尊のお地蔵様(子育経読地蔵大菩薩)が、私は本当に好きです。
いつ見ても、やさしげで穏やか。静かでニュートラルなお顔をしているので、ずっと見ていると日常生活のモヤモヤやイライラ、不安がすっと溶けてなくなってしまうよう。
お地蔵様の伏し目がちの瞳は、外の世界に反応してすぐに波立ってしまう心を、おだやかでまっさらな水面に連れて行ってくれそうです。
仏教の詳しい教えを私はちゃんと理解していませんが、あのお顔を見ていると、「ああ、こういう方向の心がきっといいんだな」となんとなくフィーリングで感じることができます。
いつもあんな心持ちでいられたらなぁ……
本堂の中には他にも仏像が数体あり、ほのぐらくて神秘的な、絶妙なライティング(きっと昔の人もこんな灯りで見ていたことでしょう)で拝観することができるのでオススメですよ!
一つの時代の「咲く」から「散る」へ
一つの時代の「桜咲く」から「桜散る」までが、ここにあります。
「そうだ 京都、行こう」2003年春・二条城
……と、またしても「そうだ 京都、行こう」のパクりインスパイアで申し訳ありませんが
この宝戒寺も、一つの時代の「咲く」から「散る」……そう、「萩咲く」から「萩散る」までを見てきた地だと言えます。
そして……
いろいろ粛清して北条さんの天下をつくりあげた、よしときさん。
そして北条さんの幕府の滅亡とともに消えてしまった、たかときさん。
一つの時代の「始まり」と「終わり」を見てきたこの地にいると……
「おごれる人も久しからずぅ〜〜(ベベン)」となにやら琵琶の音が聴こえてきそうな……とっても諸行無常な気持ちになります。
権力争いによってたくさん流れた血に、滅亡によって燃え盛る鎌倉の炎。
この場所が見てきた「始まり」と「終わり」はどちらも赤色のイメージなのですが、その地に咲いている萩はみんな白いというのも、なんだか不思議な感じ。
ここでは、彼岸花も白い色。そのあえての白が、妙に心に残るのです。
白といえば、私たち「源氏」のテーマカラーでもありますね……
あの人の和歌が聞こえてくる……!?
さねともさまが詠んだ歌ですね
さっきまであった萩の花が消えてしまって、儚いなぁと思っている歌。
「北条さん幕府劇場」に巻き込まれ、大切な人を何度も失くし、最後には自分も暗殺されてしまったさねともくん。
その人生で失ってきたものを思うと、萩が散ってしまった悲しみ以上の気持ちがこめられているように思える歌です。
なんかすこし、言葉の力でね……かなしい世の中がやわらぐといいなって思ったんだよね
北条が滅んで、そこからまた幾百年……権力は消えてしまうが、言葉だけは残り続けるんですね
いい国つくろう、って言ってたけど、楽しいことばっかりじゃなかった(むしろ血みどろ)鎌倉幕府の歴史。
その中心となる北条氏の邸宅があったこの場所でも、いろいろあったことだと思いますが……長い長い時を経た現代では、ただただ静かなやさしいお寺です。
そこには、心を穏やかにするお地蔵様と、さねともくんの歌を思わせる可憐な白い萩が、ゆったりと風にそよいでいました。
大変な時代に生きてたさねともくんやよしときさん、たかときさんたちにもこの穏やかな空間でゆっくりしてほしいなぁと思いつつ……
萩を見にきたつもりが、なんだか無常観にひたってしまいましたね……
ふとした街角から、祇園精舎の鐘の声が聞こえてくる……それが鎌倉!
今の鎌倉は穏やかで、情緒溢れる平和な古都ですが
争いを繰り返し、いろんな人が現れては消え、幕府が滅んで、さらに気の遠くなるくらいの時を経て……
今の平和な鎌倉になるんだな!と思うと、あまりに雄大な時の流れに、一旦自分の体内時計がリセットされます。笑
大きい時計でみてみたら、日常のちょっとした悩みが、ほんのすこしやわらぐ。
そして、なんだかふしぎと、明日からもがんばろう。って気持ちになる。
そんな不思議なパワーがある街です。
みなさまもぜひぜひ、鎌倉で美しい寺社やお花を楽しみつつ、ちょこっとそこらに眠っている歴史をつついてみて体内時計リセットしてみてくださいね。
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