たまたま見かけた俳句の番組「歳時記食堂」、面白かったです。
旬の食材(この回は空豆・鱧・蜜豆)を使った料理と俳句を一緒に楽しむ、というもの。
その中の、蜜豆の一句がとても素敵でした。
単純な蜜豆でしたわが青春
上原恒子
第一印象では、ちょっと不思議。蜜豆みたいな青春とは……?でも、なんだか可愛らしい句ですね。
この句にこめられた想いは?
この句は作者の上原さんが娘さんと一緒にデパートの食堂に行ったとき、思いつかれたのだそう。
食堂で蜜豆を食べた時、むかし(昭和20年代)旦那さんとのデートで蜜豆を食べた日のことを思い出したそうです。
寒天と蜜豆に赤い求肥が一つ入った、とてもシンプルなメニュー。なんと、上原さんはその時に旦那さんにプロポーズされたのだとか。
旦那さんは俳句を詠む人で、上原さんが俳句を始めるきっかけとなった人。数年前に亡くなってしまったそうです。
このことを知ってからふたたび俳句を見ると、言葉以上の気持ちや、人生そのものがこめられている一句だったことがわかりました。
番組内でインタビューに応じていた上原さんは、とても笑顔の素敵な方。
今までたくさん俳句を作ってこられたと思うんですが、「自分の作品で一番好きな一句は?」と聞かれて「まだまだこれから」と笑っておっしゃっていました。
作者さんの人柄を知ると、またぐっと魅力が増す一句ですね。
17文字の外の物語を知る
俳句って、17文字で完成されている文学だけど、そこで直接語られていない、うしろに広がっている作者の物語を知るのも、いいものだなと思いました。
17文字に入らなかった余白の情報を想像するのも楽しいし、「実はこういう物語があったんだよ」って作者に教えてもらうのも楽しい。
いろんな楽しみ方がありますね。短い言葉なのに、奥が深い……。
「つけあわせ」も楽しい
たとえば今回の番組のように、食べ物と一緒に楽しんだり。
俳句に詠まれている場所に行ってみたり。
もちろん俳句や和歌単体でも奥深いものですが、初心者的には、何かとつけあわせて楽しむのがとてもわかりやすくて楽しい!と思いました。
言葉以外の情報、というかね。五感で感じる俳句、みたいな感じ?
イラストと俳句でも、何か楽しいつけあわせができないだろうか。
いろいろ、考え中です!
コメント
コメント一覧 (2件)
園児の送迎準備に車中のTVを付けたらこの番組を放送していました。
メモができずに、うろ覚えで、蜜豆、青春、単純の三語はおぼえているのに
どう組み合わせても、しっくりときません。探していましたらこのサイトがありました。
ぴったりとおさまりました。ありがとうございます。
(私は団塊の世代、聞いた直後は「神田川」の青春を思い起こしましたが作者は今95歳でしたか、
それを聞いて、今は今年98歳でなくなった母の青春を追慕しています。ありがとうございました)
弘中英正さま
コメントをいただき、ありがとうございます。
こちらの記事でご紹介していた一句がお探しの句だったとのこと、良かったです。
私もTVでこの一句を拝見して、作者さまの青春時代が思い起こされるような素敵な句だったので、印象に残っておりました。
お母様の青春も追慕されたとのこと。心温まるお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。