君は今 誰よりも とがっている とがっている とがっている……
『トンガリ’95』スピッツの名曲。
そんな、誰よりもトガった家紋があります。
北条氏の家紋です。北条と言ってもいろいろありますが、このトンガリ感は鎌倉幕府を牛耳っていたあの北条さん由来のものだと思います。トンガリ家紋を使い始めたのは北条政子の父・時政とのことですから、トンガリ1138と言ったところでしょうか(時政の生年)。
wikipediaによると「日本だけで241種、5116紋以上の家紋がある」とのことですが、こんなにトガった家紋が他にあるだろうか?まずは実際にそのフォルムを見ていただきましょう。
これは危ない!小さなお子様のいる部屋には置かないほうが良さそうですね。
江戸時代にこれの上に正座する拷問あったなぁ(箱根関所の資料館でトラウマになるやつ)。
こんなにトガった「三つ鱗」の魅力
この記事は、なにも「三つ鱗」および北条さんを批判しようというものではないのです。私はたしかに源氏の将軍三代目・実朝推しですが、デザインの前に人は平等ですし、べつに一方的に北条さんが源氏を利用していたとも言い切れないし、ね……?実朝暗殺の黒幕も違うって言うし、ね……??
でも、鎌倉幕府草創期の北条さんがこの家紋のように「キレッキレ」であったことは確かでしょう。(北条時政・政子・義時あたりの人たちのことをまとめて「北条さん」と呼んでおります)
以前鶴岡八幡宮の近くの「侍気分」といういかした歴史グッズのお店で、北条さんが源氏の家紋が入ったサーフボードを乗り回している柄のカバンがあり、衝撃を受けました。
伊豆の国で源氏というサーフボードを見つけ、うまく乗り回し、時代の荒波に乗った頃の北条さんは本当にキレッキレでした。(そのあとのことは知りませんが……)
武士の政権・幕府の権力を磐石なものとするために、ほんのすこしの危険分子すらためらいなくぶったぎっていく。サーフボードが壊れたあとは、北条さんは水上オートバイのように自力で進みはじめ、うしろに申し訳程度にバナナボート(摂家将軍等)をひきながら、北条幕府は続いていきました。
なぜにいちいちマリンスポーツのたとえに……?(やったことないのに)
そのキレッキレのナイフのような北条さんを、大変よく表した家紋が「三つ鱗」。カーブゼロ。一切無駄のない、エッジが効いたグッドデザインなのです。
キレッキレのデザインは心弱ってる時には辛い
で、この前の利休の記事みたいな話になりますが
キレッキレすぎると、心弱い時に見ると、辛い。
鎌倉で腹痛のときに、気づけば周りに「三つ鱗」の家紋が何個かあって、ちょっと怖かった。それくらい鋭いです。
さて、このナイフのような家紋のあとに源氏の家紋を見ると、どうでしょう。
なんという癒し。なんという雅。「笹りんどう」です。さすがの高貴な血筋(大事)。
いやしかし……あまりにも儚いのではないだろうか。トガったナイフを目の前に咲く、一輪の花(花3つついてるけど……)。その切っ先で刈り取られるために咲いているのか、笹りんどうよ……。
いやはや、源氏のことになるとつい感情が出てきてしまいますね。源氏も北条さんも仲良し!
実朝公に感情移入しすぎると「三つ鱗」もこんな風に見えてしまいます。
怖い。
いろいろ言ってしまいましたが、北条さんはすごい
いろいろ言ってしまったので、フォローしておきますと、幕府がちゃんとした組織になるためにどうしたら良いかがちゃんと見えている北条さんからすると、源氏(っていうか二代目と三代目)はちょっとふわふわしていたかもしれない(まあ三代目はいろいろ頑張ってたんだけどね!)。それでもうまいことやって、武士にとって痒いところに手が届く組織を作り上げたのはすごいし、そのあと朝廷やモンゴルと戦って勝ってるのもすごい。
結果として、歴史の勝者ですからね(鎌倉炎上するまでは)。歴女は判官贔屓になりがちだけど、でも、実際は儚くて美しいだけでは、生きていけませんから。
家紋でいろいろ遊んでしまいましたが、それもシンプルで完成されたデザインだからこそです。
笹りんどうforever
先日、この家紋がついたお守りをカバンにつけた就活生を鎌倉で見かけました。前述の感じのキレキレエリート一族なので、出世や勝負事、仕事運なんかには最適な家紋だと思いますよ。
「三つ鱗」を寺紋に使っているお寺は鎌倉にいくつかあったと思うので、そこのお守りだと思います。なにせ鎌倉は、源氏の都であった時よりも、北条の都であった時間の方がはるかに長いのですから……。打ち捨てられたサーフボードは、由比の浜辺に朽ち果てていく……(感傷)
でも、どんなに北条の家紋に囲まれても、鎌倉市章は「笹りんどう」。それだけは変わらないでいてほしい。ふと足元を見れば、ひっそりとマンホールに描かれている「笹りんどう」の花を見ては、「あ、源氏もちゃんといる」とほっとするのでした。
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