露草さんがやってきた

露草の咲く季節になりました

露草(ツユクサ)という花をご存じでしょうか?

街の道端なんかにも咲いている、小さな青い花です。

私はこの露草という花に、ちょっと思い入れがあります。

今日はそんな小さな可愛らしい花のお話です。

露草さんのざっくりプロフィール

青くて丸い二枚の花びらがとても可愛らしい。実はもう一枚、目立たない白い花びらがあるそうなんですが、私は確認できたことがありません……。

おしべの形もですが、青い二枚の花びらと白いヒゲのような部分(これもおしべ)のバランスといい、全体的に蝶々っぽい花だなと思います。

朝だけ咲く花が袋のような葉っぱの中に収納されている面白いシステム。この葉っぱ(苞と言うそう)の形が烏帽子っぽいから、「帽子花」とも言われるんだとか……。

「露草」「帽子花」の他にも、「蛍草」とか「月草」とか綺麗な名前で呼ばれています。古来歌に詠まれてきた花ですが、美しい別名が多いことからも日本人に愛されてきたことがわかりますね。

露草さんとの思い出

出会った年

3年ほど前、会社勤めをしていた頃。

毎日通る通勤路の脇に小さな空き地があって、そこがちょっとした野草の園みたいになっていました。

いつも全体的に緑色だなーというのを横目に見て通り過ぎていたんですが、ある朝ちょっと視界に違和感があったんですね。

よくよく見てみると、野草の園の中に、小さな青い花がぽつり。それが露草さんでした!

露草の青は、実際に見てみると本当に鮮やかでみずみずしい色をしています。だから露草が咲いているときの野草の園は、さわやか感ましましに。

たった一輪の露草でしたが、その小さな青は本当に私に元気をくれました。かよわいながらも夏の雨嵐をしのぎ、7月頃から9月頃までずっと咲いていてくれたように思います。

2年目

この年の露草は咲くのがちょっと遅かった。

なにぶん儚い風情の花ですから、「あれは幻だったんじゃね……?」と思い始めていました。

露草が咲いていなくて寂しいし、仕事も行き詰まっていて憂鬱だった朝の通勤路。

よりにもよって一番落ち込んでいた朝に、あの花は咲いたのです。なんとニクい演出(?)でしょう!

この年は露草にとって大躍進の年でした。

たった一輪から7・8輪の立派なファミリーへ。植物のことはよく知らないですが、きっと露草の種はこの地に根付いてくれたんだと安心しました。

3年目

さらに発展をつづける露草ファミリー。この年の園は20輪以上の露草で大賑わい!

もうここまで来たら安泰でしょう。と思っていたらさらなる発見。

気づけばその園以外にも、街のいたるところに露草の園が築き上げられていたのです。いつの間にか。

恐るべき繁殖力。もうファミリーっていうか露草一門ですね。平家もびっくりの栄華を誇ってしまったわけです。

実は強い花なのでは……

そんなわけで、3年間露草を観察していたら、「いや、けっこう強いよ……?そんなに儚くないんじゃない……?」という気持ちが出てきてしまいました。

でも、雰囲気は本当に可憐なんですよ。露草の花言葉の一つに「小夜曲(セレナーデ)」というのがありますが、ほんとにそういう、しっとりとした情緒があります。

露草は毎日、小さな生命をくりかえします。

さらに露草の園全体にも大きなスパンの新陳代謝があるみたいで、たくさん咲いているかと思えば、急にほとんどいなくなって、もう終わったかと思ったらまた咲き始める、そんなサイクルを夏から秋にかけてくりかえしています。

葉っぱの袋から花が出てきて咲くように、露草一門の中でも命の仕組みがあるのだと思いますが、人間サイドからはくるくると消えたり現れたりするように見える面白い花です。

これからも露草一門の繁栄が続くよう、今年も応援しながら観察したいと思います。

露草を詠んだ歌と俳句

人気者なだけあって露草を詠んだ和歌や俳句はたくさんあります。その中から好きなのをいくつかご紹介しますね。

朝(あした)咲き 夕(ゆふべ)は消ぬる 月草の 消ぬべき恋も 我れはするかも

詠み人しらず

朝に咲いて、夕方には消えてしまう露草。そんな露草のような儚い恋をしてしまったという歌ですね。

たしかに朝、青い花がちゃんと咲いているのを見届けて、仕事をして帰ってくると、本当に姿形がまったく見当たらないんです。

青い花がしぼんでも茎と葉っぱの部分は残っているんでしょうが、周りの緑にすっかりまぎれてしまうので、「露草消失イリュージョン!」みたいな感じに見えるんですね。

そうなると、朝に見たのは幻の花だったような気すらしてきます。だから、儚い、すぐ消えてしまう、という露草のイメージはよくわかります。(実際は結構強い花だけど)

朝だけ咲く花の他にも、露草は昔染料として使われていて、その染料がすぐに落ちてしまうという意味でも儚いイメージになるそうですよ。

露草の かそけき花に 寄りてゆく 心の行方 ひとり喜ぶ

窪田空穂

露草の小さな花に心癒される時間は、たしかに静かな喜びがあります。

私も例の園にて、早足で駅へ向かう勤め人たちの流れに遅れないようにしつつ、ひそかに露草を見ていました。

その間、わずか5秒ほどですが、仕事の朝の憂鬱をすこしだけ慰めてくれました。他の勤め人たちは下に広がっている小さな自然に見向きもしませんから、私と露草だけの時間にも思えて、短くとも大切な時間でした。

ことごとくつゆくさ咲きてきつね雨

飯田蛇笏

きつね雨って狐の嫁入りのことかな?露草は青いしずくのような花ですので、しっとりとした雨の景色もとてもよく似合いますね。

露草と朝の挨拶交しけり

清崎敏郎

これ、わかる。

露草の碧きひとみの中に立つ 

鷹羽狩行

露草は紺のなみだを一つづつ

藤田美代子

あの独特な青い二枚の花びらが、いろいろなものに例えられます。青い瞳に、紺色の涙。どちらも綺麗なイメージですね。

「露」という言葉自体がよく涙に例えられるものなので、それと青い花びらや儚いイメージが重なって、とても涙が似合う花だと思います。

植物を知ることもまた、友達を作ること

露草さんは街中でも見ることのできる花なので、ぜひ探してみてくださいね!きっと心癒されることでしょう。

元気をもらい、命の仕組みを教わり、朝は挨拶を交わす。強い雨風の翌朝には、ちょっと心配しながら園を見に行き、無事咲いているとほっとします。

よくよく考えたらこれも、「友達」なのかもしれませんね。

「友達」を増やしたら歴史や古典が楽しくなるように、知ってる植物を増やしたらなにげない散歩道がとても楽しくなる、かも。

私も歴史古典のみならず、道端にももっと友達を増やしていきたいなぁと思っています。

露草さんに出会った年に描いた露草と麻呂。

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